【インタビュー】DEAR SPIELE(ディアシュピール) ボードゲーム業界に新しい風を送り続けるイノベーター川口正志(かんちょー)さんにお話をお伺いしました。

【インタビュー】DEAR SPIELE(ディアシュピール) ボードゲーム業界に新しい風を送り続けるイノベーター川口正志(かんちょー)さんにお話をお伺いしました。

今回は、東中野のボードゲームカフェDEAR SPIELE(ディアシュピール)川口さんにお話をお伺いしました。 老舗ボードゲームカフェのディアシュピールのオーナーであり、マーダーミステリーの日本での普及の立役者、また新しい取り組みをいち早く始める業界の先駆者でもある川口さんにその原動力や大切にしている価値観、世界観について語って頂きました。*撮影時以外はマスクを着用して取材させて頂いております。

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偶然から生まれたボードゲームとの出会い

Q.「本日は、お時間をお取り頂き有難うございます。まず初めに、川口さんがボードゲームと出会ったきっかけを聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?」

はい、ボードゲームと出会う前はモンスターハンター等のいわゆるデジタルゲームが好きでした。それまでは本当にボードゲームとの関わりもなく、よく仲間と集まっては、行きつけのたまり場にしていたお店でデジタルゲームをして遊んでいました。

ボードゲームに興味を持つきっかけは、東日本大震災のあった2011年3月11日に帰宅難民となり、そのお店で夜を明かす事になった事でした。当時、既に電力への不安がメディアで騒がれていたので、たまたまお店にあった、電気を使わないで出来るボードゲームをみんなでやってみることになったのですが、気づけば一晩中ボードゲームをしていました。その時は震災への不安も勿論ありましたが、ある種吊り橋効果のような、自分の中で新しいゲームとの出会いに強い高揚感、面白さを覚えています。

Q.「凄い印象的なボードゲームとの出会いですね!当時はまだボードゲームカフェも多く無かったかとは思いますが、川口さんご自身はどのようにボードゲームとの接点を増やしていかれたのでしょうか?」

ボードゲームが好きになり、もっと遊びたいと素直に思いました。ただ、当時はボードゲームカフェ自体がほとんどなく、公民館等でやるゲーム会も今と比べて盛んではなかったです。ゲーム会はいわゆる猛者の集まりという印象があり、初心者の自分が行くのは少し億劫で飛び込むことが出来ませんでした。

そこで「行く勇気が無いなら自分でやろう」と、半年後には自分でボードゲームコミュニティ“調布のあな”を始めていました。そんなに集まらないと思っていたのですが、初回から20人ぐらい集まり、気づけば150人ぐらいのコミュニティとなり、比較的カジュアルかつ若い人も多く、初心者から玄人まで気軽にこられるオープンなコミュニティが作れていたんじゃないかなと思っています。

サービスの改善を追求し続ける

Q.「10年前の黎明期にボードゲーム会をそこまで大きくできた理由はあるのでしょうか?」

勿論ビジネスではないのですが、ビジネス側の考えを取り入れたからだと思います。簡単に言うと、当時のボードゲーム会は放任主義という印象が強く、もっとケアしてあげても良いのではないかと思いました。1回500円と比較的安価ではありましたが、お金をいただいている以上、どういったケアが求められているのか試行錯誤を繰り返し、たくさんの方に来ていただけるようになったのかなと感じています。

具体的には、遊びやすいようにテーブルにマットを敷いたり、ゲームも参加される方がたくさん持ってきてくれるのですが、より多くのゲームを楽しめるように主催自ら毎回大きなキャリーケース二つ分のゲームを持ち込んでいました。参加者に満足して帰って頂くという当たり前のことをやる。それが来てくれた方々に楽しんでいただけた理由かなと思います。“他の業界だと当たり前に行われている事を積極的に取り入れてお客様の視点でサービスを改善し続ける”この経験が今のディアシュピールの原点にもなっています。

◆現在もディアシュピールでは、遊んだ後に店舗でそのままボードゲームを買えるようにする等 ユーザー視点で多くの取り組みを実施されています。

好きの延長線上を歩み続けたキャリア

Q.「色々お伺いするうちに気になってしまったのですが、今までどのような事をされてきたのか、川口さんの経歴についてもお伺いさせていただけませんか?」

実は、高校卒業後に進学せずに就職をしており、現在のボードゲーム事業に至るまでに5社を経験しています。正直ぶらぶらしていた時間も多く、あまり明確にキャリアを描いて歩んできたわけではありません。ただ敢えて言うなら、遊びの延長線上、好きの延長線上が私の今のキャリアですね。格闘ゲームが好きで、「GUILTY GEAR X」の攻略サイト「そらい館」の管理人として、ゲームセンター店舗に企画を持ち込んで大会イベントを開催したりもしました。メーカー主導でもなく、ゲームセンターの企画でもない、当時無かった「プレイヤー企画のゲーム大会」の流れを作れたと思います。

とにかく、好きには正直に色々やりたい事をしていました。そんな事をしている内にご縁もあり、某ゲーム系雑誌の出版社にお世話になっていたりもして、キャリアに繋がっています。趣味の延長線上で、やりたいことをずっと選んでやってきた中で色々と道が拓けた感じでしょうか。振り返ってみれば、私の力と言うよりも、本当に運がよく、人に恵まれて、助けられてきた人生だと思います。

Q.「ボードゲームカフェを始められる直前は何をされていたのでしょうか?」

直近で一番長く働かせて頂いたのはイマジニアという会社です。そこではコンテンツディレクター/経営管理部門、内部監査業務等を経験しました。「リラックマ」のサイト運営や、「カピバラさん」「ご当地キティ」等のキャラクターサイトの立ち上げを通じて、本当に様々な経験をさせて頂きました。

ずっとユーザーに近いところで働きたいと思っていたので、版元の方と共にファンとの交流の場にお邪魔したり、担当コンテンツ(キャラクター)の店舗に直接足を運んだり、IT企業でしたが現場を大事にするちょっと変わった働き方をしていたと思います。

当時はファンの方にも顔を覚えて頂くこともあり、話しかけていただけたりもして、ファンの方との距離の近さも、とても楽しかったです。パソコンの前で仕事をする事も嫌いではなかったのですが、お客様の顔をみて、実感、手触り感をもって働く事が自分のやりがいになっていました。お手伝いさせて頂いていた版元のご担当者様から色々なイベントに直接誘っていただける機会も増え、最初の5年間は特に充実した会社員生活を送らせていただきました。

その後は異動して経営管理部門、内部監査等の管理業務を経験しました。仕事も楽しかったですし、勉強になった部分もあるのですが、ユーザーの方との距離は遠くなり、ちょっとずつ自分の中でやりたい事とのギャップも出てきて、退職してもっとユーザーとダイレクトに関われるような仕事をしたいという思いが募っていきました。

未知のボードゲームとの遭遇

Q.「創業までのお話し、どのような原点がディアシュピールの基になったのかを沢山お聞かせいただき有難うございました。次にお伺いさせて頂きたいのが、ディアシュピールではお客様にどのようなボードゲーム体験を提供する事を大切にされているのでしょうか?」

他のカフェさんがどうかは分からないですが、僕個人としては数を揃えることは非常に大事だと考えています。ただ数が多ければよいという意味ではなく、面白いゲームや珍しいゲームを厳選したうえで提供したいと考えています。最近は、200~300個くらいのゲーム数から始めるカフェさんが多いと思います。もちろんそれで充分事足りるのですが、並んでいるゲームがどこに行っても大体同じになっているとも感じます。

ディアシュピールでは、遊ぶ、遊ばないは別としても色々なゲームへのアクセスの機会を増やしていきたいと思っています。例えば、テレビなどは自分の欲しい情報だけじゃなく、見たい情報も興味のない情報も垂れ流しで流れてくるじゃないですか?

その中に誰かにとって大事な、価値のある情報がたまたま得られることがあると思っています。それをディアシュピールで再現したいんです。ゲームを綺麗にそろえるだけでもちょっとしたワクワクが生まれて興味を持っていただけると思います。

その中で「あ、このパッケージが好きだな」とか、「このゲームなんだろう?」とか、感じていただければ、色々なゲームを知ってもらうえる場を創れると思っています。ユーザー同士のマッチングをされているカフェさんも多いですが、ディアシュピールでは、お客様と未知のボードゲームの遭遇を大切にしています。

◆高さや大きさを揃え多くのボードゲームが美しく並ぶ棚

Q.「確かに、見たことないゲームや、絶版でもう手に入らないゲームが沢山ありますね!ちなみにどれが特にレアなゲームなのでしょうか?」

元々僕自身がコレクターでもあったので、結構希少なボードゲームも置いているのですが、見えているボードゲームでしたら、aleaの古いシリーズとかは日本でも海外でも手に入らないですし、全部持っている人は日本に10人もいないかも?

GOLD SIEVERシリーズは、私が知る限り全部で108種類あって、同じゲームでもパッケージの絵が違うものなども出ているのですが、恐らくロゴが入っているものは家にあるものも含めて全て持っているかと思います。これは流石に世界で私しかいないかもしれません。

日本ではこういったゲームのラインナップを知っている方は少ないと思うのですが、海外の方がいらした時は「aleaが全部揃っているのありえない!」みたいに感動されることもあって、そういうときはやっぱり嬉しいですね。お店に置くことで、たとえ遊ばなくても話題のひとつとしてボードゲームとの接点の一つになったり、パッケージやデザインが統一されたシリーズもののボードゲームが綺麗に並んでいるのを見て感動してくださる方もいたりして、どんな形でも感動を提供できるのは嬉しいです。

◆aleaシリーズの作品

◆GOLD SIEVER SPIELE シリーズの作品

“楽しい”演出を極めていく

Q.「カフェディアシュピールの今後の展望や野心についてもお伺いさせて頂けませんでしょうか?」

野心ですかぁ~・・・実はディアシュピールの店舗としてはあまりないんですよね。何店舗も増やしても、同じコンセプトでボードゲームを揃えるのは難しいとも思っています。

もう一店舗同じコンセプトで作ろうとしたとき、どこまでディアシュピールらしさを再現できるのかチャレンジしてみたいという気持ちは少しだけあるのですが、正直どんどん店舗数を増やしていきたいみたいな野望とか野心はないんですよね。やるなら、マーダーミステリーの店舗を作ったように、遊びをメインにした全く業態の異なる店舗をやりたいです(笑)

野望ではないですが、今来て下さっているお客様を大切にする事はこれからも変わらずに大事にしたいと思っています。「ボードゲームカフェらしさ」と言えるかわかりませんが、来て下さったお客様に「凄い数!」と感動してもらえたり、“ボードゲームは楽しい“という体験を持ち帰っていただきたいです。

その“楽しい”が無いと店舗も続かないと思っています。その“楽しい”や小さな感動の演出をどうやって創っていくのか。ボードゲームの面白さだけではなく、店舗として充実感、感動を演出していき、お客様に満足して帰ってもらえるようにする事はこれから先もずっと大切に、追い続けていきたいと思います。

Q.「例えば今はどんな新しい取り組みをされていらっしゃるのでしょうか?」

大切にしたいところは残しつつ、バージョンアップをさせ続けたいので、新しい取り組みは色々と試してみています。最近ですと店舗のアプリを導入したり、店舗販売、通販も日々充実させたりしています。

近年、増床をするボードゲームカフェさんが増えていますが、この増床についても、最初に手掛けたのはディアシュピールではないでしょうか。今後もボードゲームとお客様のアクセスを増やせる仕組みを試行錯誤し、ディアシュピールらしさを追及したいと思ってます。

空間演出という意味では、棚の配置やボードゲームの見せ方の気になるところなんかは、僕自身で見て直したり、棚に入れているボードゲームの向きや、箱の大きさも意識して並べるようにしていたり、細かい部分は上げたらきりがないと思います。

案外導入しているボードゲームカフェは少ないと思うのですが店舗に制服を導入していたりもしています。僕たちはエンターテインメントの中で生きていると思っていて、店舗で働くキャストはみな、個性豊かで本当に面白いキャストが揃っています。常々「変人しか採用しない」と本人たちにも言っていて、ちょっと苦笑いされます(笑)。ぜひ、キャストとも仲良くしていただければ嬉しいです。提供する空間にも、働くスタッフと共にこだわって、これからも「ディアシュピールらしく」ボードゲーム体験を届けていきたいです。

◆最後は店内販売されている大量のボードゲームと一緒に写真撮影させていただきました。

まとめ

今回は、ディアシュピールの川口さんにお話しをお伺いさせていただきました。記事に書ききれない程色々なお話をお伺いさせて頂きインタビューもあっという間に終わってしまいました。川口さんのボードゲームキュレイター、ライターとしての側面、マーダーミステリーを日本で普及させたお話し等まだまだ聞きたいこと、書きたい事が出てきました。是非次回も取材を受けて頂けるように編集部も精進して参ります。川口さん本当にお忙しい中沢山のお時間、貴重なお話しありがとうございました!

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DEAR SPIELE

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